2019.04.01 INTERVIEW

生薬と薬草のことならお任せ!
まちおこしに一役買う原薬メーカー

飛騨の薬草について取材に回っていると、至るところで名前が出る「アルプス薬品工業株式会社」。飛騨に本社をもつ医薬品原料メーカーで、飛騨市の薬草への取り組みにも積極的に参画している。

古川町にある本社には薬の原料となる生薬の標本がずらりと並んだ展示室があるほか、工場と研究所の機能も備わっている。

取締役の太田慶隆さん、営業本部の白川靖之さん、山田孝洋さん、研究開発部の山田修嗣さんに会社のルーツや飛騨市との取り組みについて話しを伺った。

地元に根付いた医療品原料メーカーとして誕生

当社は昭和22年に創業しました。創業者が飛騨出身の兄弟で、兄が社長、弟が製薬会社の薬剤師だったようです。製薬会社のつながりと製造技術を持ち合わせており、地元に自生する薬草のエキスを抽出するところから会社がスタートしました。

創業当初はいわゆる日本の民間薬や中国伝来の薬草から抽出したエキスを作っていましたが、製薬会社からの需要に合わせて、原料から有効成分を取り出す単離や化学合成にも着手し、抽出、単離、合成の3本柱で事業を拡大してきました。

今現在、当社で扱う生薬は植物、動物、鉱物など何百種類もあります。コストの面から原材料はほとんどを輸入品でまかなっていますが、中にはゲンノショウコやドクダミなど、飛騨でも見かける薬草を扱うこともあります。カプサイシンを抽出するための唐辛子は、中国等の在来種を使っていますが一部飛騨でも栽培をしています。

えごまの新品種「飛系アルプス1 号」の開発、研究

山田(修):
15年ほど前から、岐阜県の研究施設である中山間農業研究所と共同研究を行い、日本で初めてとなるえごまの新品種「飛系アルプス1号」を開発しました。当社では成分の分析などを行い、品種登録のお手伝いをしました。「飛系アルプス1号」の優れている点は、植物のポリフェノールであるルテオリンやオメガ3といわれるαリノレン酸を多く含んでいること。品種登録後も新品種に適した栽培方法の確立など、共同研究を続けています。

山田(孝):
「飛系アルプス1号」を使った製品化も行っています。現在販売しているのは、「飛騨えごま油」と、「飛騨えごま油」をアスタキサンチン配合のカプセルに詰めた「飛騨えごま油ソフトカプセル」の2種類。地元の物産館などに置いていますが、オメガ3のブームもあって口コミで広まり、地元の方にも多く愛用いただいているようです。

山田(修):
「飛系アルプス1号」は、市内の農家さんに栽培してもらっています。製品が全国に流通すれば、飛騨のえごまを知ってもらうことにもなるので、地元農業の発展に寄与できればと思っています。

天然の薬。飛騨の暮らしの身近にある薬草

太田: 
飛騨で採れる薬草はたくさんあります。企業として私どもが使うのは量やコスト面で難しいですが、民間薬として使える薬草はそこら中に自生しています。私は飛騨の生まれで、子供の頃は実家のタンスの引き出しにほおずきを乾かしたものなどが常備薬として置いてありましたし、熱が出るとミミズをお湯に煎じて飲んでいました。

山田(孝):
私も飛騨出身ですので、薬草は身近にありました。えごまは家の畑で作っていたので、食卓にもよく出てきて、子どもの頃はあまりおいしいと思っていませんでしたが、歳をとってからはある意味薬かなと思って積極的に食べるようにしています。

白川:
えごまは昔どこの家庭でも栽培していましたね。えごまのおはぎというのが定番で、あんこやきな粉のおはぎより、えごまが一番人気なんです。

山田(修): 
私は名古屋出身ですが、飛騨に来て20年ほど経って薬草に自然と親しむようになりました。名古屋でも見かけてはいたかもしれませんが、興味も知識もなかったので通りすぎていました。こちらにきてからは、皆さん詳しいのでいろいろ教えてもらって。歩いていると、オオバコとかゲンノショウコ、ヨモギなど、そこら中で見かけます。

えごまや薬草を使ったまちおこしに協力

太田:
飛騨市では、薬草を使っていろんなイベントをしています。そういったイベントには当社も人員を割いて協力しています。飛騨で4年ほど前に開催された「全国薬草シンポジウム」では、本社の生薬標本展示室を一般公開しました。2018年秋に開催された「飛騨市薬草フェスティバル」では、生薬標本を飛騨市文化交流センターに展示しました。展示をしていると、標本だけでは物足りなくなって、生の生薬も持ってきたり、白川が趣味で作っている薬草を鉢ごと持ってきてもらったりということもありました(笑)

白川:
自宅で70種類ほどの薬草を畑や鉢植えで育てているんです。仕事でも扱っているので、植物としてはどういうふうに育っていくのかというのを知りたくて、

太田:
えごまを軸にしたプロジェクトとしては、「飛系アルプス1号」などの飛騨産えごまをブランド化して、 市内外にえごまを推進しようという「飛騨えごまの里推進プロジェクト」にも関わっています。自分たちが幼い頃から自然と生活に取り入れていたえごまや薬草が、本当に体にいいものだったと見直されるのは喜ばしいことです。地域貢献にもなるので、協力できることがあればと思っています。

商品購入先

飛騨古川さくら物産館

飛騨市古川町三之町2-20
TEL:0577-73-7770
https://www.hida-kankou.jp/spot/3862/

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