2019.04.01 INTERVIEW

おいしくて体にいい野草茶を
「かわい野草茶研究グループ」

飛騨市河合町の市民団体「かわい野草茶研究グループ」は、役場から薬草の栽培を依頼されたのをきっかけに発足。町内の主婦を中心としたメンバーでオリジナルの野草茶づくりを行っている。

「かわい野草茶研究グループ」が作る野草茶はすっきりしていてクセがなく、毎日飲んでも飽きがこない。イベントなどで販売されると売り切れが相次ぐ人気ぶりだ。その人気のワケは? 野草茶はどうやって作られているの? 発足当時から主軸メンバーとして活動する、代表の宮下朝子さんに話を伺った。

20周年を迎えた「かわい野草茶研究グループ」

平成9年に町内の主婦4名で発足した「かわい野草茶研究グループ」。薬草の栽培と野草茶の開発をスタートし、翌10年には地元の薬草などをブレンドした野草茶を商品化した。体に良くて飲みやすい野草茶は、市内外にファンを増やし、昨年にはグループ発足20周年を迎えた。

現在は野草茶2種に加えて、野草グラノーラやローズティーなどを販売。商品はイベントへの出店や地場産市場、物産館などで販売するほか、全国発送も行う。飛騨市の特産品として、ふるさと納税の返礼品にもなっている。「全国に発送していますが、何十回とリピートしてくださる方が多いんです。『飲みやすくておいしい』とか『お通じが良くなった』『血圧が安定した』『血糖値が下がった』と言った声をいただけるのが嬉しいですね」と朝子さん。

地元資源を活用する取り組みとしても注目され、他府県からの視察やメディアの取材を受けることも多い。2014年に飛騨で開催された「全国薬草シンポジウム」では、朝子さんがパネラーとして登壇し、グループの活動について発表した。

毎日飲みたくなる野草茶を目指して

野草茶はほうじ茶、クズ、ハトムギ、ドクダミ、クワ、オオバコ、クマザザ、スギナ、クワの9種類をブレンドしたものと、さらにクズの花と芽を加えたクズ入りの2種類。ハトムギは富山県産のものを使うが、それ以外の野草はすべて県内産。春から夏にかけて地元の野山に自生しているものを摘んできたり、メンバーが畑で栽培したものなどを使う。もちろん無農薬、無添加だ。

薬効の効果を引き出すことはもちろん、飲めやすさを考慮したブレンドが特徴。すっきりしていて薬草独特の匂いはない。「スギナが多いと青くさいとか、ドクダミが多いと匂いがきついなど、メンバーや役場の人たちと何度も試飲をして配合を調整しました」

最初の商品が完成したのは平成10年の秋。河合村(現・河合町)の文化祭で地域の人に飲んでもらったところ、とても好評だったとか。「今でもイベントに出店するときは、野草茶を沸かして試飲をしてもらっていますが、いつもおいしいと言ってもらえるんですよ」

クズの花と芽入りの新商品を開発

平成24年には、薬草博士の故・村上光太郎先生の指導の元、クズの花と芽を加えた新商品を開発した。クズは河合町内のいたるところに自生する野草で、7月〜9月にかけてきれいな赤紫色の花を咲かせる。肝臓にいいとされ、野草茶に加えることで味わいもまろやかになる。

「新商品を作ることになって注目したのが、たくさん生えているクズ。クズの花をブレンドした野草茶を作りたいと村上先生に相談したところ、花だけでなく芽を入れるといいとアドバイスいただきました。芽は一度熱湯をかけてから乾燥させるためひと手間かかりますが、先生に教えていただいた作り方を守っています。花びらは細かく粉砕していましたが、村上先生から粗挽きにすると薬効がアップするとアドバイスいただき、それからは他の薬草も粗挽きにするようになりました」

クズの花と芽入りの野草茶は地元の農業まつりでお披露目したところ、行列ができるほどの人気商品に。昨年度は年間で1700袋以上を売り上げ、「かわい野草茶研究グループ」の主力商品となっている。

河合町が誇る野草茶を残していきたい

 朝子さん自身も毎日野草茶を飲んでいるという。朝起きると薬草茶1袋を2リットルの水で煮出し、夫と二人でその日中に飲みきってしまう。そのおかげか、朝子さんの肌は艶があり、髪の毛も黒くて若々しい。とはいえ、朝子さんたちが野草茶を作りはじめて早20年。今の課題はメンバーの若返りだ。

「野草茶づくりには材料採取から乾燥などの処理、刻み、再乾燥、ブレンド、袋詰め、発送など一連の作業があります。一番大変なのが材料採取。夏の暑い中、野山に入って薬草を摘んで、種類ごとに天日干しや陰干しをするのは根気と体力のいる作業。これまで人手不足などいろんなことがありましたが、地域の皆さんに協力してもらってここまで活動できたのは有り難いこと。作業分担を検討したり後継者を育てて、これからも野草茶を残していきたいと思っています」

添加物など一切なく手間ひまかけて作られる野草茶は、食の安全や健康ブームが盛り上がる今、希少価値が高い。この先30年、40年と河合町の野草茶づくりが続いていくことは、地元はもちろん、全国の野草茶ファンの願いでもあるのだ。

かわい野草茶研究グループ

飛騨市河合町有家62番地
TEL 0577-65-2431

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